貧困・自殺・看取り・葬儀 目の前にある現実を受け止めて、人として何が出来るか。中下大樹の取り組みを発信していきます。

対談紹介

第四回 特定非営利活動法人 人と人をつなぐ会代表理事 本庄有由×中下大樹

その第四回は、人と人をつなぐ会代表理事 本庄有由さん。
http://npo-ppj.com/index.html
「ここは都心の姥捨山(うばすてやま)だね」。65歳以上の高齢者が7割近くを占める東京都新宿区百人町にある戸山団地。高齢者の孤独死が多発しているその団地は「限界集落」「現代の縮図」とも言われています。
自らも戸山団地の住人であり、孤独死防止活動に取り組む本庄有由さんと今、何が問題なのか?私たちに出来ることは何か?皆さんと一緒に考えてみたいと思います。

TBSテレビ 「噂の! 東京マガジン」で、戸山団地の現状を取り上げたときの映像を紹介しながらのスタートとなりました。

本庄さん本庄 私もこの戸山団地に住んでいます。と同時にすぐ近くで、NPO法人「人と人をつなぐ会」を皆さんと一緒にやっています。
私がここにきたのは、11年前。自然に囲まれて、公園はありますし、のどかなところで。買い物がちょっと不便だけど、こんないいところはないなと。一生ここで暮らせるなんて、と喜んだものです。それが、8年前に妻が亡くなり、そのときに、妻が団地の自治会の役員をやっていたんですね。他の役員の方から、「任期が終るまでの半年、代わりにやってください」と言われ、役員になったことがきっかけで、団地全体のことを知ることになりました。
私が役員をやっていたときに孤独死の方が出たんです。これは、なんとかしないといけないぞと。また、その後すぐに、自治会が解散したんです。広いところで、1号棟から13号棟までで、1500世帯くらいあるのかな。それぞれ班があり、役員が60名くらいいたんです。季節ごとに夏まつりをやったり、イベントをやったりしていました。ここは管理人がいないから、自治会が解散したら、棟ごとのつながりがなくなった。その上に、新しく建った棟には、60歳以上、または障害者が、板橋、青山、渋谷等々、いろいろなところから移り住んできたんです。もうこうなると、他民族の集まりみたいで、全体像がつかめなくなりました。
今年の4月に10号棟で孤独死の方が出まして、2ヶ月わからなかったんですよ。山奥の一軒家じゃないですよ。
自治会があったときは、何か問題があるとすぐに取り上げて対策を考えたりしたんですが、それもできない。だから孤独死した方がいるということを、未だに知らない人もいる。
そういう団地の状況がものすごく怖いと思うんですね。第2・第3のそういう方がでてきても、周りの人は「2ヶ月わからなかったよ」「そんなもんですかね」と。その状況に慣れてしまうこともこわい。
これは、ここだけの問題にしないで、団地の人以外にも実情を知ってもらい、助けてもらいたいなと。今日、中下さんと一緒にこういう会ができたことを光栄に思っています。

本庄さん中下 ありがとうございます。私が代表を務める「いのちのフォーラム」では、貧困、孤独死等々、様々な問題に取り組んでいる方々と話をして、皆さんと一緒に考える場を提供しています。私自身、孤独死や自殺、ホームレス状態の方々の葬送支援を行っていますので、本庄さんの話はよく分かります。
5月に昨年度の自殺の統計が発表されましたが、20代、30代の死因の一位が自殺なんですね。つまり、今の社会がいかに生きづらいか、というだと思います。
今年の1月末に「無縁社会」という番組が、NHKで放映されました。3万数千人の方が、孤独死と言って、一人で誰にも看取られず亡くなって、死後しばらくたってから発見されている。こういうケースが多発し、今後はもっと増えてくると思います。これは、人間関係の希薄化・社会的孤立、相談できる人がいない、頼れる人がいないということの現れだと思います。日本全体の問題で、どこでもこういう状況になるということを知っていただくと同時に、人ごとではなく、自分の問題として考えていくことが大切だと思います。
どのような支援を、一人ひとりがやっていけばいいのか、現場の話を伺いながら、皆さんと一緒に考えていきたいと思いますので、積極的な発言をお願いしたいと思います。
本庄さん、最近の戸山団地の様子はどうですか。



本庄さん本庄 映像で見ていただいた通りなんです。僕も高齢者で疲れてきているんですが(笑い)、僕みたいなおじいちゃんが、『若手』で活動しないといけない。悲しい世界ですよ(笑い)。
それでも、やはり誰かがやらないといけない。今日もNHKに来てもらっているけど、これはマスコミに知ってもらい、世間に知らせてもらわないとしょうがないと。



本庄さん中下 サポートの一つとして、「見守り携帯サービス」というのに取り組んでいますが、この辺の説明をお願いします。

 




本庄さん本庄 それについては、「人と人をつなぐ会」の竹原のぞみさんから説明してもらいます。

 

 

 

本庄さん竹原 3年半前から孤独死をなくそうという活動を始め、新宿区、新宿区の社会協議会と一緒に、見守りの機器の普及やイベント等、様々な角度から活動しています。   
人間の目で見守るというのはとても大事なのですが、限界がある。これはこれで引き続き行っていきますが、ある部分は機械に頼ってもいいんじゃないかということで、民間企業の協力を得て、まず固定型の見守りサービスをはじめたんです。これは、工事をして家の中に機器を設置するんです。電話と連動していて、ボタンを押すとダイレクトにコールセンターに通じるというものです。部分的には優れているのですが、一回外に出てしまうと状況がわからない。それから、安否確認のボタンを、毎朝一定の時間に押さないといけないのですが、それが逆にストレスになる。
そこで、今回は、改善策として携帯を利用し、コールセンターのサービスを入れました。家のマークのボタンを1プッシュすれば、ダイレクトにいつでもつながる。コールセンターには、登録者の情報があるので、その情報に添って、例えば、本庄さんが携帯を押せば、『本庄さんどうしましたか』と聞いてくれる。
また、毎朝携帯を開け閉めするだけで、登録している人へ、自動的にメールが送られ、安否確認ができるんです。メールを練習する必要はまったくありません。
私は、本庄さんの見守りをさせてもらっているのですが、朝起きたときに携帯を開けてくれれば確認ができる。「あ、今日も生きてる(笑い)」こういう感じで安心できるんですね。


本庄さん本庄 携帯のことで、担当している長谷川さんにも一言お願いします。

 

 




本庄さん長谷川 携帯の最大の魅力は、行政への取次ぎを、我々のコールセンターがしますというものです。高齢の方からすると、杖がほしいとか、入浴がしたいと思っても、どこに言えばいいかわからない。内容によって扱う課が違うんですね。でも、この携帯に電話をくれれば我々がつなぎます。今のところ、新宿区だけですが、携帯がつながれば北は北海道から南は沖縄、九州でも使っていただけます。
 また、高齢の方の中には、メールが打てない。カメラ機能があっても撮影できないという方が多い。今後使い方の勉強会もできればいいなと考えています。


本庄さん中下 そうですね。高齢の方だけでなく、障害を持っている方等、いろいろな方に使っていただければと思います。今日はいろいろな立場の方に来ていただいていますので、紹介させていただきます。
まず、精神保健福祉士でNPO法人「人と人とをつなぐ会」理事の高部知子さん、お願いします。



本庄さん高部 10年ほど前から薬物中毒やアルーコール依存症の方々の精神のケアや権利擁護をしています。
縁があって、本庄さんと出会い、一緒に活動するようになりましたが、こうした問題は社会に発信しなくては、個人がいくら頑張っても変えられない。また、もう一つ。私はカウンセリングもしますが、心だけケアしても、問題は解決しない。なぜ、と思ってきましたが、必要なのは、行政のサポートなんです。よく行政は、何もやってくれないという方がいますが、実はやっているんですね。日本の福祉は、世界からみても優秀なんです。
では、何がいけないか、というと、皆さん、介護福祉、生活保護は知っていても、行政が自宅を担保にお金を貸してくれるのをご存じでしょうか。あるいは、子どもの塾代を行政が出してくれるのをご存じでしょうか。
非常に充実したものはあるのですが、それが一般の方には伝わっていないんです。支援が必要な方々のすぐそばで、行政には、こういうサポートシステムがありますよとか、地域包括センターに相談すれば、いろいろなことを解決してくれますよと、伝えることが重要だと思いました。私も微力ですが、皆さんに知っていただくために、マスコミにも手伝っていただきながら、なるべくわかりやすくと思って活動をしています。


本庄さん中下 確かに情報が知られていない。知ろうとしていないという、住民側の問題もあるかと思います。
次に、新宿区高齢者サービス課主査 山王文恵さんお願いします。



 

本庄さん山王 私自身の経歴をお話しすると新宿区に入区以来、ずっと児童を中心とした職場にいまして、この4月から高齢者の方の職場に移動しました。そこで、出会った課題が、戸山団地の問題です。それまで、少子化の問題等に取り組んできたんですけど、高齢者の問題と子育て世代の問題は、決してかけ離れたものではないと思います。NPO法人「人と人をつなぐ会」、そのこと自体が一つの答えになっている気がするんですけど、人が人とつながれないことによって、いろいろな問題が生じていると思います。
例えば子育て家庭であれば、とても大変な時期を人とつながれないために、お母さんが一人で辛い思いをしている。その結果虐待という行為に及んでしまう。お子さんが育っていって、思春期にさしかかった時に、人とつながっていないために、引きこもりが起こったり。また、高齢者になって、今までは社会でバリバリ仕事をしていたのに、仕事社会から切り離されると孤立してしまう。
縦割り行政とよく言われます。確かに私たちの部署もいろいろなセクションに分かれていますが、ライフステージを区切らずに、長いスパンで行政としても関わっていくことが大事だと感じています。
高部さんから紹介していただいたので、お話をさせていただきますが、区内に10ヶ所の高齢者総合相談センターという施設があります。こちらは、高齢者の方のいろいろな相談にのるためのセンターです。今日、そのセンターで、戸山団地のエリアを所管している大久保高齢者総合相談センターにいて、相談を受けている阿部さんがいらっしゃっていますので、阿部さんにも一言お願いしたいと思います。



本庄さん阿部 私は、大久保高齢者総合相談センターに勤務し、戸山団地の1号棟から4号棟までを担当しています。本庄さんの活動については、私たちも非常に共感しています。新宿区では、75歳以上の方が3000人以上いらっしゃいますが、その半数が一人暮らしをしています。私達マンパワーでは足りない。先ほどお話があった携帯とか、いろいろなものを駆使して、地域の方々を見守れるようなシステムを作ることがすごく重要だと思っています。



本庄さん山王 新宿区の取り組みとして、いくつか紹介させてください。
新宿区では、孤独死防止のために、多くの配布協力員さんにも協力していただき、「ぬくもり便り」という情報誌を、75歳以上の一人暮らしの方を対象に配布しています。全ての住民基本台帳、外国人登録を基に、一人世帯と思われる方に、月に2回、民生・児童委員の方に協力してもらって、実態調査を行っています。例月の配布は月に二回で、多くの配布協力員の協力により行っています。情報誌には、各地域のまちを取材した記事やひとり分の食事のレシピ等のほか、お昼ごはんを配るサービスや「ほっと安心カフェ」の取り組み等々の情報も掲載しています。
「ほっと安心カフェ」はこの戸山団地の14号棟にある集会場をお借りして、NPO等と協力して、第1・第3木曜日に行っています。ボランティアの方にも手伝っていただき、お茶を飲みながら、いろいろお話しをしたりしています。「友達ができたのよ」と話してくださる方もいます。
そこで、気になるのは、参加してくださる方は、比較的女性が多く、男性の方はなかなか出て来られない傾向があるということです。これからの課題ですが、ぜひ男性の方にも参加してもらいたいと考え、8月からは、土曜日も月1回、開催することになりました。一人でも多くの方に参加していただきたいと思っています。


本庄さん中下 これからは老若男女、民間・行政問わず、人間としてできることから始めていく。大事な問題だと気づいた人から、気づいた時から初めていく、という動きが必要なんじゃないかと思います。今も相談窓口がいろいろありますが、もっと増やしていく必要があるし、そこにうまくつなげていく必要もあると思います。
今日は、この戸山団地にお住まいの山口さんにもいらしていただいていますので、せっかくなので一言お願いします。


本庄さん山口 私が団地に入ったのが昭和60年代。26歳、独身で、姉妹3人で住んでいました。その後それぞれ独立して、私も結婚しましたが、もう60年ここで暮らしています。その間に夫は旅立ちまして、今は一人暮らしです。今84歳ですが、同じ建物に先輩もいるんですよ。90歳以上の方も。みんな元気です。私自身、孤独死は避けられない問題ですけれども、元気で絵を描いたり、お花を作ったり、好きなことをしていきたいと思っています。



本庄さん中下 参加してくださっている方の中に、看護師歴42年という、村松さんがいらっしゃいますので、一言お願いします。

 




本庄さん村松 看護師の長い経験の中で、在宅看護を昭和58年からボランティアで続け、61年からは会社として看護師だけで運営しています。家族がいても、必ず一人になるときがくるんですね。最期のときを迎えるまで、自分らしく生きられるように。無駄な高度医療ではなく、できることを自分でしながら、助け合えるコミュニティを作ることができればと、今日お話を伺いながら感じていました。



本庄さん本庄 練馬区の区議の方もいらしていますので一言お願いします。

 

 

 


練馬区区議 私はもともと新宿で、NPOで介護の仕事をしていました。そのときに、本庄さんとお会いしました。一生懸命に活動されていて、それを聞いて私も何かしなくてはいけないなと思ったのが、議員になった一つのきっかけでもあります。今日はお話を聞けてよかったと思っています。区民が頑張っているからいいじゃないか、ではなく、政治・行政のあり方も変えていかないといけない。私も一緒に頑張っていきたいと思います。


本庄さん中下 参加者の方でお話しをしてくださる方はいらっしゃいますか。

 

 

 



参加者(男性)
 私はすぐ隣の高田馬場で生まれ育った人間です。昔はこの辺は戸山ケ原といって雑木林、子どもの遊び場だったんです。いろいろな事情で住宅地になったんですが、確かに地域が崩壊していると感じます。本庄さんが何とかしようとするその志を大事にしたいと思います。今、一人ひとりが立ち上がらないといけない。新宿区も区長も含めて取り組んでいて、私も委員の一人です。今日いろいろなお話を伺って、実態を把握しましたので、無関心ではいられません。今後、本庄さんたちと情報を密にして、一人ひとりが動いて、つながって、輪となって、行政を動かしていかないと、と感じました。

本庄さん中下 今日は、いろいろな立場の方にお話をしていただき、また、参加者の方からも接客的に発言していただき、ありがとうございました。
高齢者の問題だけでなく、現実に起こっていることを社会に向けて発信していくと共に、気づいた人が、目の前で起こっていることを知った人が、その責任として行動していくことが大切だと思います。行政・政治家、市民。皆が手をとりあってできることから始めていきたいと思っています。
これからも宜しくお願いします。


参加された方の声

●一人ひとりの暮らしということを考えていたら、現状のような住宅政策にはならないのではないか。ビデオの中に『姥捨て山』という表現があったが、まさにそういった印象を受けました。住宅・福祉と区分けせずに、一人ひとりの命に向き合って欲しいし、僕個人としてはもちろんそういったことを考えながら自分にできることをやっていきたいと思いました。官がやらないこと。官をつなげることは民で。僕個人でできることをしていきたいなと思っています。

●いのちの重要性を抽象的に論ずるだけでなく、いのちを守るためにより実効的な方策として、どのような手段を講じていくべきかという点にもフォーカスがおかれていて、いのちの問題をより身近に感じることができました。

●孤独死が叫ばれている中でこのようなイベントが開催されていることは、間違いなく次につながっていく。孤独死問題を考える人を増やし、開けていけるものがあると思います。私も卒業論文にこの問題について取り上げてみたいと思っています。

●人としての温かさやつながり、思いやりが希薄になり、コミュニケーションがはかれない人達が多くなっている現状を少しでもかえていかないといけないと感じています。草の根の活動と行政等へあげていける力が必要かと思います。

●本庄さんの『疲れたんです』という言葉に対してとても重みを感じました。このような事実があることは知っていても、なかなか自分と関わりのある問題とは考えにくく、行政の責任と考えてしまいがちでした。人と人がつながりをもてれば、頑張っている人を疲弊させることなく、力づけられるのだと感じました。まずは自分ができることを考えたいと思います。



本庄さん中下大樹の感想
言うは易く、行うのは難しい。孤独死問題は根が深く、そう簡単に解決できる問題ではない。コツコツと出来ることから始める重要性、そして行動を持続していくエネルギーを本庄さんから感じました。既に9月18日には新宿区長を招き、1000人規模の集会を百人町の淀橋教会で行うことが決まっています。こちらも是非、お越し下さい。